求人情報を見ていると裁量労働制という制度をよく見かけます。
特にグラフィックデザイナーやWeb制作、通販サイトの運営やフォトグラファーなどクリエイティブ系の求人に表記されていることがありますが、この裁量労働制とはいったいどんなものなのでしょうか。
この制度を採用している企業で働くことになった場合はどんな給料体系になるのかをご紹介します。
裁量労働制とは?
裁量労働制とは「労働時間が労働者の裁量に委ねられている労働契約」のこと。
これは「契約した労働時間を働いたこととする制度」という意味になります。
簡単に言うと、
どれだけ働いても給料は一緒ですよ!ということです。
なんて嫌な制度なんでしょ。12時間働いたとしても支給されるのは結局8時間分になるということですもんね。
この制度には時間外労働という概念がなく、個人の裁量で進められる仕事がほとんどです。
野球選手の年俸みたいなもので一年で契約した金額分の成果を出すということなんです。
しかし、日本の企業は割と勘違いしていて単に残業を支払わなくても良い制度として採用している場合もあります。
裁量労働制を導入しやすい職業
裁量労働制に適している職業を上げると記事の冒頭で書いた、Webデザイナーなどのクリエイティブ職ですね。
クリエイティブ職は毎度同じ仕事を繰り返すのではなく、月にこなしている仕事の量や、案件ごとで価格も違います。
時間がかかっても儲からな仕事や、ちょっとした作業量でも利益が大きかったりする仕事など様々なんです。
それに、極端に言うとデザイナーって納期さえあれば1つの仕事でどれだけでも時間をかけてしまえるんですよね。
通常3~5時間でできるものを10時間かける事もできます。なので残業代を稼ごうと思えば稼げてしまうわけです。
これに対して、仕事の案件数が少ないにもかかわらず残業代で稼ぐことも可能になっちゃいます。
それに対し、個人裁量制は評価型の報酬になるとううことですね。入社時に年収で定めるので残業をどれだけしても収入は変わりません。
それなら仕事をたくさん振られてどれだけたくさんの仕事をこなしても同じ給料なのでは。。。
基本的に労働時間は法律で決められています。
長時間勤務が続くようなら会社に問題があるので労働基準監督署などに相談しましょう。
残業時間は法律上以下のように決められています。
月:45時間
年間:720時間
上記の規則を基本とし、さらに下記の規定で制限しています。
月45時間以上の残業:年6回まで
1ヶ月の残業の上限:100時間未満
複数月の残業の平均:80時間以内
この時間の上限は2019年4月に大手企業、2020年4月に中小企業を対象に改定されました。
45時間以上の残業が年6回で平均残業が80時間だと半年でできる残業の合計残業時間はMAXで480時間。
80時間だと1日の平均は4時間程度になるので、定時が17時30分の場合は21時30分に代謝できるということですね。
そう考えると繁忙期だとしてもなんとかなる残業時間だと感じます。
子育て中の共働きには無理かもですが。(自分は無理でした)
残りの半年はその半分の720時間から480時間を差し引いた240時間ということになります。
前半の半分になるので、1日平均の残業も2時間程度で済みます。毎日終電まで残業するような働き方だと、げんじつてきではないし、会社自体に原因があります。
仕事の仕方も人海戦術のみで、アナログな方法が主体であったり上層部の人間がサボっているなどの可能性があります。
裁量労働制はどんな職種に多いのか
出版社や新聞記者など労働時間内だけでは業務が回らない仕事です。このような労働時間の拘束がない職種に多く見られます。
出版の編集者などだと漫画家さんの所に原稿もらいに深夜に走るとかありますもんね(汗)テレビで見たことがあります。。。
他にも弁護士や公認会計士などのサムライ業、不動産関係などと様々。
Webデザイナー、ディレクターなどクリエイティブ職の求人にも裁量労働制は多く見かけます。
この制度は雇う側からすれば便利な制度であるとは思います。
チラシを1枚制作するのに2時間でできる人と10時間でできる人がいた場合。(基本給も手当も同額と考える)
WebデザイナーAさん
2時間で1枚できる人: 就業時間(実務7時間)で3枚制作 → 残業代なし
WebデザイナーBさん
10時間で1枚できる人:就業時間(実務7時間)1枚制作 → 残業代3時間分
こうして考えると2時間で1枚できるAさんの方が生産性が上なのに、10時間で1枚できるBさんよりも収入が低くなってしまうということになります。
こういったことが少なくなる点では仕事ができる雇われ側と企業側双方にメリットを見出せるのです。
裁量労働制とみなし残業の違い
みなし残業制度というものが記載されている求人情報も多く見かけます(裁量労働制より多く取り扱われています)。このみなし残業制度とはどういうものでしょう。
□みなし残業制度
・契約時に定めた「固定の残業代」を支払う制度
・残業時間が少ない場合でもみなし残業代は満額支払われる
・みなし残業よりも残業が多くなった場合は「超過分が支払われる」
□みなし残業制度と裁量労働制の違い
みなし残業制度は定めた残業を超過した分を支払うのに対し、裁量労働制は契約時に決めた金額を固定で支払うことなので残業をどれだけしても変わりません。
ぼく自身もみなし残業制度と裁量労働制の違いをよく理解しておらず、そんな気分になったことがあります。入社する会社がその部分についてちゃんと説明してくれるところならいいのですが、社内規則が渡されるだけで何も説明がない場合もあるので要注意です。
裁量労働制のメリット
超過分の残業が支払われるみなし残業制度に対し、裁量労働制は固定なのであまりメリットを感じないように思いますがちゃんとメリットはあります。
裁量労働制自体、下記のような時間の縛りがないのがメリットです。
裁量労働制のメリット
・出勤時間(始業時間)
・退勤時間(就業時間)
・就業時間
上記の時間は全て個人裁量に委ねられるということになります。このことから裁量労働制に対して次のようなメリットが出てきます。
裁量労働制のメリット
・出勤や退勤時間の自由
・仕事を早く終わらせれば自由な時間が増える
・仕事のやり方やペースも個人の裁量になる
自分のライフスタイルに合わせて仕事ができるというのが魅力ですね。
電車のラッシュを避けたり、週末は早めに切り上げて出かけて見たり自由度は増えますね。
裁量労働制の危険な落とし穴
メリットだけ見ると大変魅力を感じますが、どのような制度にもデメリットは存在します個人の裁量に委ねられるということはその分責任も大きなものになります。
膨大な仕事を任されたり納期が短い案件が発生した場合はどうでしょう。決まった収入で多くの仕事をこなす必要が出てきます。
裁量労働制のデメリット
・長時間の労働が当たり前になってしまう
・発生しない残業代(例外を除く)
・制度の悪用
個人的な思いですが、会社によってはデメリットの方が大きい。
企業のコスト面で一番大きいのは人件費です。その人件費を削ろうとして対象外の業務にも無理やり適用くることもあります。
裁量労働制を導入していても出勤・退勤時間が決められていたり休日出勤を強要したり、単に残業代を支払わなくていい都合のいい制度と勘違いしている会社もあります。
求人情報に裁量労働制の表記があったら面接時にしっかり確認をしましょう。
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